亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
言いかけた時、オーウェンのこめかみに城壁の破片が飛んできた。

間一髪。オーウェンはぎりぎりで避けた。

リストの後ろから、溜め息混じりのキーツが歩いて来た。

「……オーウェン…その辺にしないか?」

呆れている。完全に呆れている。リストはハテナマークをいっぱい頭に浮かべていた。

「………総隊長…!どういう意味ですか?僕にも知る権利が…!」
ここで真面目な性を出して欲しくは無かった。キーツは苦笑いで黙っている。

《………別に良いだろそれ位。………えー所謂童貞だ!!》

……リストはすぐに理解したのか、見る見る内に真っ赤になった。哀れな少年よ。

《そうそう、童貞!キーツと同じ…》

リストが抱えていた筈の法螺貝が、いつの間にか光速で宙を飛び、オーウェンの横っ面に命中していた。




……キーツはぱんぱんと手をはたき、ばつが悪そうに咳払いをした。







……総団長は…。

……総団長が…。

……総団長は童…。


不可抗力にも聞いてしまった兵士達の中で、そんな小さな声が囁かれた。


キーツはそのまま法螺貝とオーウェンを回収して、後始末をリストに任せた。

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