亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――これが……そのフェーラねぇ…」
ルアの記憶を具現化した風景。
暗い塔の中、血塗れの地獄絵図。兵士の生首を片手にこっちを見ている少女が一人。
灰色の軍服を着ている正真正銘のアレスの使者。
しかし少女は、人の姿ではなかった。
長い爪に尖った牙、白い瞳に、額の第三の目。
「………うん…ちゃんと二足歩行だし……ブーツ履いてやがる………まるで人間だなぁ………こっち見る目は完っ全に獲物を見る目だけどよ……」
リストは後ろの方で、憎々しげにその姿を見ていた。
オーウェンはこの重~い空気に溜め息を吐く。
「………んじゃあ最後………問題の隊長さんを出してくれ、ルア。………キーツ…良いな?……………似てるのか何なのか知らねぇが………お前の想ってる女じゃねぇ。………敵の重要人物の一人だ。………分かってるな……」
キーツは椅子に座って頬杖を付いたまま、小さく頷いた。
「……分かってる」
「………いちいち動揺すんじゃねぇぞ…」
ルアに目配せで合図を送ると、ルアは角の玉を青く染めた。
ぐらりと視界が揺らぎ、周りは城のある丘の傍ら。塔から貴族の城に行く道に変わった。
城の光が注ぎ込む薄暗い風景。