亡國の孤城 ～フェンネル・六年戦争～

1.望んでいた舞台

「―――出動…ですか」

一瞬、驚きを隠せない様に瞳は大きく見開かれたが、すぐに鋭利な眼光を宿した。
………その光には、喜びが現れていた。


朝の軍議で突如、第4部隊の出動が命じられたのだ。

出動は二週間後。月の出ない夜。
第1部隊から第4部隊までの総力を持っての、襲撃だ。

大きな衝突。約半年ぶりの本格的な襲撃だ。
滅多に出されないトウェインの第4部隊も参加だ。

………トウェインは、身体が小刻みに震えるのが分かった。

………武者震いだ。なんと心地よい感覚。…やっとだ。やっと………生臭い戦場を歩める。敵を切り付け、喉を切り裂き、首を落とし、生暖かい血飛沫を全身に浴び………恨みを晴らす。

見ているだけなど、もう嫌だ。敵を前にして、この衝動を何度押さえたか。何度…。

自然と、口元が緩む。
………闘志に燃え、殺戮の魔物と化す彼女の表情は………ぞっとするほど恐ろしく、そして妖艶だ。


………この娘は戦のために、生まれてきた。誰もがそう思わずにはいられない。

「―――前衛は第1と第2。後衛が第3と第4。前衛が出撃後、時間をおいて後衛も出撃。………詳細はまた次の軍議で説明する。各部隊の隊員に報せる様に………では、今日はここまで」

そう言い終えると、ベルトークはさっさと部屋を出て行った。