亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
トウェインや第4部隊の面々の部屋は、この塔の一番暗く、人通りが無い場所にある。
………何と言うか…追いやられている。
真っ暗な廊下を歩き、トウェインは自室へ向かった。
―――瞬間、背後の空気がぐらりと揺らいだ。闇の温度も、一気に二、三度上昇する。
―――そして次の瞬間………
「――――隊長隙有り!!!イブちゃん特製ドロップキ―――ック!!!!」
目にも止まらぬ速さで、トウェインの背中目掛けて細い足が突っ込んだ。
………ひらり…と身を捻ってかわし、トウェインはその足首を掴んだ。掴んだまま、腕を高く上げた。
「―――うわあああぁぁぁ―――!?避けられた挙句捕まったああ―!」
甲高い少女の声は、廊下一帯にわんわんと響く。
トウェインは掴んでいた足をぱっと放した。
「痛ああぁぁぁ―――!」
声の主はそのまま重力に従って床に落下。後頭部を強打し、悶絶しながらその場で立ち上がった。
背丈はトウェインよりも低い。幼い顔立ちは可愛らしいが、大きな茶色の瞳は気の強い印象を与える。
オレンジの明るい髪は、女の子らしくポニーテールにしている。
「―――隊~長~…なんで避けれるんですか―…ちょっとは手加減して下さいよ…大人気ないぞ~」