亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………別に僕じゃなくても…。

「―――嫌なら…」

「付けます。嫌じゃないです」

思いっきり首を横に振り、真剣に考え始めた。


………どんなのが良いか…。


………一瞬…『ローアン』が良い……とか思ったが………平手が飛んできそうだ。
以前も機嫌を損ねた彼女に無表情で痛い平手を食らった。


………でもやっぱりローアンと発音が近いのが良い。

………リー……いや……ルー………。




………ルー…アン………………ルーア……。


「―――まだ?」

やや低音な声が聞こえた。
キーツは冷や汗を流した。


「………『ルア』………『ルア』が良い…」

「………ルア?」

ローアンは小首を傾げた。

……可愛い。


「………うん。短い方が良いし、良い安いかな…って…」

「………ええ。良いと思うわ。…ルア………貴方の名前はルアですって…」

小さな体を指先で撫でると、ぴくりと動いた。










(………)

視線を感じる。

………あの辺の柱から…。

恐る恐るそちらに目を向けると………。





……………怨念に塗れたギラギラした二つの目が……!!


(―――ひっ……!!)

見なきゃ良かった!好奇心って恐ろしい!
< 291 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop