亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
それでもキーツにとっては、一緒に居られるだけで充分嬉しかった。


「――あら、国家騎士団の総団長に剣の稽古を?……素敵ね、すぐに強くなるわ」

「……まだ始めたばかりだから………どうかな…いつも稽古が終わった後は擦り傷だらけだよ。容赦ないからね」

そう言ってキーツは、腕や顔に出来た傷跡を指差して見せた。

「国家騎士団はお城の警備はするけれど、私達王族とは面会出来ないの。………総団長はどんなお方?」

キーツは腕を組み、少しの間沈黙した。

「………何て言うか………幽霊みたいな人」

ローアンは怪訝な顔を向けた。

「………幽霊?」

「うん。…物凄く強くて、優しくて、落ち着いていて、冷静で………さすが長、っていう存在感はあるんだ。………けど…」


いつも何処を見ているのか。何を見ているのか。何を思い、何を考え………何を悲しんでいるのか。
貼付けた様な微笑は、いつも哀しい目がそこにある。

「―――……殻…みたい。生きてるのに………殻みたいに中が何も無い。………人間らしくない…人間を止めたみたいな………生きた亡霊だよ。……まるでね」

「………そう。…上に立つ人は…何処かそんなものよ。……お母様もそう…。……哀しそう……」
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