亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ローアンとキーツは黙りこくった。

………場の空気が暗い。




「―――まあとにかく…亡霊みたいだけどかっこいい人だよ。歳はまだ…27だって。髪も白いし髭も生えていたから、最初はおじいさんかと思った」

ローアンはくすくすと笑った。

「………私も会ってみたいわ。だってこの城を守ってくれているんだもの。顔も知らないなんて…守られる側としてあってはならないわ………王族って不便ね。ずっとここから出られないなんて」

ふぅ…と5歳児らしかぬ溜息を吐く。つまらなそうなスカイブルーの瞳がふと、生き生きとこちらをとらえた。

「……でも……今はキーツが来てくれるから………嬉しいわ」

滅多に見せないローアンの笑顔。

それが今、自分だけに向けられている。


「―――………うん」

嬉しい。ローアンが笑ってくれると…嬉しい。

幸せだ。
………本当に。



「いつかこっそり国家騎士団の総団長に会おうかしら。…お名前は何て?」


キーツは記憶の糸を辿った。確か…。















「―――………確か…クライブ=フロイアって言っていたよ」

< 294 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop