亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
9.亡國
―――それが政略結婚だなんてこと、最初から分かっていた。
第一貴族に生まれた時点で定められていたレールだ。
………相手はこの国のお姫様。三人の内の長女…第一王女様。
のっぽな父と無駄に白い母は狂喜乱舞。
………子供は自由にはなれないね。
女一人選べやしない。
しかも相手の姫君はまだ11ときた。
未成年とか…そんなレベルじゃねぇ。………ガキじゃん。
かく言う俺もまだ15だったが………もう少しお互い成長してから会った方が…。
………まあ…王族は16で結婚しないといけないから………顔合わせ、ってやつかね。
のこのこ父について行って……作り上げた紳士面で丁重に挨拶して……相手と顔を合わせた。
エルシアという名前だった。
まだ小さくて、華奢で……子供だった。
だが………大人になれば、さぞや綺麗になるだろう、美しい人だった。
なんだかフワフワとした雰囲気を醸し出すエルシア。
彼女は微笑んで言った。
『――そんな畏まらないで下さいな。本当の貴方を見せて、ね』
―――…なんだ……何でもお見通しか。
………急におかしくなって………素で笑ってしまった。
悪くない、とか思った。