亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
極寒の冬が終わり、冷たい風は何処へやら。
暖かい風が春を運んで来た。
初めて城に来てから、いつの間にか四年の歳月が流れていた。
もう四年?
そんなに経ったのか。
大きな鏡の前に立ち、キーツは自分の姿を上から下まで眺めた。
………背がだいぶ伸びた。
一年で五、六センチ。最大で十センチ伸びた時もあった。
髪も伸びた。焦げ茶色のやや癖のある髪。今は肩を越え、背中中央辺りにまで伸びている。
無造作に一つに束ねて後ろに追いやるのが常となった。
輪郭も変わってきた。身体が全体的に固くなった気がする。
成長したんだな、と改めて実感した。
「―――キーツ!」
城の階段の上から、もう聞き慣れた声が自分を呼んだ。
階上から現れたのは、一回り大きくなった…少しだけ大人びたローアンだった。
長い金髪は腰の辺りにまで伸び、綺麗な髪止でまとめている。
色白さや目の色は変わらない。
立ち振る舞いや言葉遣いも変わることは無かったが、女性らしくなった気がする。
彼女は今、9歳だ。
「キーツ!」
ローアンはドレスの裾を摘み、急ぎ足で階段を降りて来た。
その前を………真っ白な犬が走っていた。