亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

極寒の冬が終わり、冷たい風は何処へやら。
暖かい風が春を運んで来た。

初めて城に来てから、いつの間にか四年の歳月が流れていた。


もう四年?

そんなに経ったのか。

大きな鏡の前に立ち、キーツは自分の姿を上から下まで眺めた。


………背がだいぶ伸びた。
一年で五、六センチ。最大で十センチ伸びた時もあった。



髪も伸びた。焦げ茶色のやや癖のある髪。今は肩を越え、背中中央辺りにまで伸びている。

無造作に一つに束ねて後ろに追いやるのが常となった。

輪郭も変わってきた。身体が全体的に固くなった気がする。







成長したんだな、と改めて実感した。





「―――キーツ!」



城の階段の上から、もう聞き慣れた声が自分を呼んだ。

階上から現れたのは、一回り大きくなった…少しだけ大人びたローアンだった。

長い金髪は腰の辺りにまで伸び、綺麗な髪止でまとめている。

色白さや目の色は変わらない。

立ち振る舞いや言葉遣いも変わることは無かったが、女性らしくなった気がする。
彼女は今、9歳だ。


「キーツ!」

ローアンはドレスの裾を摘み、急ぎ足で階段を降りて来た。
その前を………真っ白な犬が走っていた。

< 297 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop