亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
以前はあんなに小さかった聖獣ネオマニーのルア。

手の平サイズから一転。あっという間に大きくなり、一メートルを越した。

ルアはキーツとローアンにしか懐いていない。
甘え声を出すのは二人にだけだ。


そのルアが、こちらに疾走してくる。

後ろにいるアレクセイは…そっと後退した。

「キーツ!ルアを捕まえて!」

「えっ?」

………よく見ると…ルアの鳶色の目はなんだか必死だ。

ローアンから逃げている。


向かって来るルアを捕まえようと前を遮ると、いともたやすく脇を通り抜けられた。

ルアはそのまま速度を変えずに柱から柱へ跳び移り、ローアンの頭上を越して再び階段を上がっていった。

「……お風呂に入れようとしたら…嫌がって逃げたの……お風呂嫌いだから…」

ああ、なるほど。それでか。


………聖獣も風呂嫌いなペットと同じだな。

「あっちに逃げた!あっちは確か応接間のある…」

「違うわキーツ。応接間はあっち。そっちはコスマン大臣の奥様専用のアロマセラピー部屋よ。向かいはその愛人の鬱になった時用の密室空間。あ、ちなみに隣りは4番目の愛人の日光浴部屋………まだ覚えてないの?」

「コスマン大臣は奥さん以外に愛人が多過ぎるよ!」

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