亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
コスマン大臣……あの無駄に白くて肥えた雪ダルマめ!

とかなんとか内心悪態を吐きながら、ルアの捜索にかかった。

二手に分かれ、キーツは階段を駈け登った。
城に来て早々…何故にこんな…。







三階だろうか。

この城は螺旋階段だから、今何階にいるのかという感覚がいまいち分からない。

(………愛人さんの鬱部屋はこの下だから………うん…三階かな)

ルアは暗い所を好まない。隠れるのは苦手だから、すぐに見つかる筈だ。

逃げ出そうとしたら、お風呂なんか入れないよ、と善人面をすれば…。

……ああ駄目だ。ルアは嘘を見抜く。




誰も居ない長い廊下をキョロキョロ見回しながらキーツは進んだ。
この辺りは書物庫やら資料室が集中している。
昼間は誰も来ないと聞いていた。








―――ガタッ…。



薄暗い廊下の奥から、微かな物音が聞こえてきた。

太い柱の裏からだ。
窓から漏れる淡い日光に照らされ、白い壁に影が浮かんだ。

微動だにしない人影。

………ルアだろうか?
隣りの柱にそっと近寄り、恐る恐る覗いて見た。
















―――キーツはばっと目を背けた。











………タイミングが悪かった。
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