亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



………人影は……オーウェンとエルシアだった。

……だったのだが………………来てはいけない所に来てしまった。


漸く15になった華奢なエルシア。
19の大柄なオーウェンに、柱に押さえ付けられ、半ば強引に口付けされていた。


両手首を掴まれているため、抵抗など出来ない。

おまけにかなり深く口付けされているのか、エルシアはやや息苦しそうだ。



………邪魔するつもりも無いし、見るつもりも無い。

だが………そこは好奇心溢れる11歳。


目を背けるどころか、無意識でちゃっかり覗いていた。


ドキドキしながら、二人の甘―いシーンを傍観するキーツ。



………いや…いけないだろ自分。






「―――…んっ……」


苦しそうにエルシアは声を漏らし、オーウェンの胸を押した。

……ふっと互いの唇は離れた。



エルシアは綺麗な顔を真っ赤に染めながら、長身のオーウェンを見上げた。



いつもの意地悪そうな笑みはそこには無く、何処か真剣な……本当に真剣な目がエルシアを見ていた。



「………こんな強引に…」

「―――なんで…?」

オーウェンはエルシアの細い顎に触れ、そっと上げた。

「―――嫌なら嫌って言えばいい…」
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