亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


エルシアの腰を引き寄せ、再度唇を重ねた。

オーウェンの赤いピアスがキラリと光る。


………また、沈黙が生じた。





………顔を赤らめるキーツ。



―――うわぁ…とか思いながら見ていると………………………………………閉じていたオーウェンのオレンジの瞳が、ギロッとこちらを向いた。





心臓が口から出るかと思った。






オーウェンは空いている手を、ぱたぱたと小さく振った。


―――…あっちに行け。邪魔だ。


………多分そう言っているのだろう。



これ以上ここにいると………オーウェンに殺される。



ビクビクドキドキしながら、キーツはそっとその場から離れた。




………御免なさい…御免なさい…と心の中で何度も連呼し、ほうほうの体で脱出した。







―――もうあの辺には行かない。行くもんか。

強い決意を固め、再度ルア捜索に意識を向けた。








階下でのんびりくつろいでいたアレクセイにルアを見なかったかと聞くと、「先程ローアン様が引っ張って行っておりましたよ。キーツ様、遅れをとりましたな~」と軽く笑われた。





………役立たずの称号を抱え、ローアンの部屋へ向かった。
< 301 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop