亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
蝋燭が一本灯るだけの暗い部屋。淡い柔らかな明かりに、室内はぼんやりと照らされる。
………決して寝心地が良いとは言えない、薄汚れた古いベッド、小さなテーブルに椅子、散々読んだ分厚い本が所狭しと並ぶ本棚、壁に立て掛けてある様々な形の剣。

ある意味、何も無い。何も無い、殺風景なトウェインの部屋。
………まるで、冷めた心の内を現しているかの様だ。
中央に、トウェインは椅子に腰掛けていた。

―――静かに目を閉じていると、周囲の闇がぐらりと曲がり始めた。
トウェイン以外誰もいなかったこの室内に、異なる三人の影が浮かんだ。

その内一番小さい人影が元気良く挙手をする。

「――第4部隊隊員、イブ=アベレット到着しました―!」

その隣りにいる、イブよりも背の高い少年も、静かに挙手する。こちらはイブと違って大変愛想の無い、無表情な子供だ。茶色の短い髪は殆ど外側に跳ねているが、本人はいたって気にしていない様子。

「………同じくダリル=メイ………到着しました…」

そして一番後に立っているのは、トウェインよりも背の高い、優しげな微笑を浮かべる女性。にこにこしながら軽く挙手をし、やんわりと口を開く。肩まであるストレートの金髪が、首を傾げる度にさらさらと揺れる。

「―――えーっと…同じくマリア=クローデル。到着です」
< 31 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop