亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
第4部隊は、一番特殊な部隊だ。

隊長がまだ成人にもなっていない女であること自体既に特殊であるが………それと同等に、三人の隊員も異彩を放っている。

他部隊の兵士は毎日の様に噂し合う。

まだ11歳であるお子様のイブ=アベレット。何故子供が、しかも女が兵士としてごく普通に軍服を着て歩き回っているのか。見掛ける度に陰口を叩いている。
………しかし、軍人としての実力はその辺の兵士よりも遥かに卓越している。たいていの男は、あの少女に勝てない。


次に、またお子様のダリル=メイ。まだ13歳の少年だ。
噂では、彼は盲目らしい。しかし、本当に目が見えていないのか、と疑うほど、彼は何不自由なく生活している。
嫌がらせで、背後からふざけて切りかかった奴もいたが、ことごとく弾き返され、半殺しの目にあっている。……しかも口を開けば嫌みばかりときた。
第4部隊の中では一応策士であり、また隊長クラスの人間と並ぶほど…もしくは超えるほどの“闇溶け”の名人らしい。


そして最後の三人目、マリア=クローデル。26歳である唯一の成人だが、こちらも軍人としてあるまじき、女だ。
大人の余裕というやつだろうか。どんなに嘲笑や差別を受けても、柔らかい笑みを向けるだけだ。
彼女はまあ、そこそこの技量だ。

………しかし、戦場で彼女を見た者は全員、「化け物」と呼んでいる。
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