亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「――では…軍議を始める。………イブ…何を書いているのだ…」

「………腹癒せに…第2部隊にデマを流そうと思って……誰かが落としちゃった~みたいにメモを廊下に置いておこうと…」

羽ペンの先にじゃぶじゃぶインクを付けながらイブは言った。

目は見えない筈なのだが、隣りに腰掛けているダリルは、手元の羊皮紙の切れ端を覗き込む。
焦点の定まっていないエメラルドグリーンの瞳には、光が無い。

「―――なんて書いてるの…」

「ゴーガン隊長の軍服の裾は足首まであるほど長い。それ即ち、短足を隠すためである…と」

トウェインは頭を抱えた。それがばれた時、怒られるのは隊長の自分である。

「――…駄目よイブ…隊長さんが可哀相だわ…」

マリアは「めっ!」と叱るが、全っ然迫力が無い。

「あながち間違ってないんじゃない?」

止めるどころか、酷いことを言うダリル。

「………そうなの?」

信じ始めてきたマリア。



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