亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
一人死ぬ度に増殖する呪いの影。

亡國の罪の形。


特に城の付近は頻繁に現れるため、敵の国家騎士団はこの影の処置に手を焼いているようだ。







塔の北側は、獣さえ寄り付かない密林地帯だ。
湿気の多いこの辺りは地面が泥の様で、非常に動き辛い。


第3部隊の兵士達が数名、剣を握り締め、息を殺して警戒しながら進んでいた。


―――そっちにいるか?

―――いや…いない

―――…おかしい


“闇溶け”の応用である、闇の中での意識だけの会話。

10から20メートル位の距離でも、コンタクトは可能だ。
隊長クラスの人間ならば、軽く100メートルは越す。



気配など全く無い中、一人の兵士がふと、動きを止めた。


―――…おい…あれ…

奥の茂みの方を指差す。


静寂に覆われたほの暗い空間に一つ。

………音も無く、それはいた。



木々の下。
グネグネと蠢く、真っ黒な、不可解な物体。
…あれが、元は同じ人間であったとは、到底思えない。
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