亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
――――そんなことはあってはならない。


総団長にして国を滅したクライブに、この城を渡すなど。











「―――駄目だ。そんなの………」


キーツは意を決した。





「この城を……あの男に渡すものか………この国をこれ以上……汚させない…!」


「―――キーツ様……」

その12の幼い姿には似つかわしくない、何処か威厳のある言葉。アレクセイはキーツを
見詰めた。



………父親によく似ていた。






「―――国家騎士団は何のためにあるんだ!国を守るためだろう?………主人亡き後も……守るものがある!守る義務がある!………………国家再興だ。………裏切り者に……易々と渡せるか!!」


キーツは握っていた父の剣を地に突き刺した。


鋭い刃に、青い光沢がきらめいた。



兵士達は身を震わせた。


………この成人にもなっていない小さな少年の何処に、そんな強い意志があるのだろうか。


左右異なるオッドアイは、既に涙など乾ききり、燃える様な光を宿していた。









「―――そうだ…。………ゲイン様の言う通りだ!」

「国家騎士団は…この国は………まだ終わってなどいない!!」




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