亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
一人、また一人と、兵士達は己の剣を地に突き刺していった。
剣の十字架を前にした兵士。それはまるで、墓守の様だった。
孤城を守る兵士。
白い兵士達。
全員の意志が、その時一つになった。
「―――ゲイン様……いえ、キーツ様……今や国を統治出来る貴族は貴方様とオーウェン様のみ。………………我らを……再興のための騎士団として、どうか導いて下さい」
キーツは驚いて目を見開いた。それはつまり、国家騎士団の総団長になるということだ。クライブが裏切った今、従うべき長がいない。
キーツは首を横に振った。
「……ぼ…僕は………そんな………まだ成人にもなって」
「―――なりゃあいい」
背後から聞き慣れた声が聞こえた。
「……オーウェン様!」
「意識が戻られたのですか!」
兵士達が騒ぐ中、キーツは急いでオーウェンに駆け寄った。
アレクセイの迅速な応急処置により、止血出来たらしい。
あの大出血だ。普通なら助かっても一週間二週間は意識が戻らないのだが、この男は軽々と上半身を起こし、不敵な笑みを浮かべている。
ただ、まだ激痛がくるのか、無理して笑っている様だ。