亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

………痛々しい。


「………痛みも疼きもないのか?」

「……ええ。まだ無いわ。…………その内出て来るのかしら?ちょっと怖いわぁ…」

「………笑い事じゃないだろ」

へらへらと笑うマリアに、トウェインは苦笑した。

「………ここしばらくは襲撃も何も無いらしい。……その間…パラサイトは一切使うな。…………この伸びの早さからだと…」


あと二、三回……いや一回でも“解放”すれば………。




………マリアは……。




「……もういい。服を着ろ」

マリアはまたゆっくりと軍服のボタンに手を掛け、上半身を隠していった。


「………そういえば……以前ベルトーク隊長に呼ばれていたな?枝の事だったのだろう?………どうだったんだ?」

ベルトークはマリアにパラサイトを寄生させた張本人だ。
何度も“解放”を繰り返しているマリアの限界を、見定めようとしているのかもしれない。

マリアは相変わらずにこにこと笑みを浮かべながら、小さく小首を傾げた。


「………お薬を頂いたわ。………………それだけ…」


「……薬?…………そうか………しっかり飲んで……安静にしておけ」

心配するトウェインに、マリアはただやんわりと笑った。
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