亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
第1部隊隊長と直接話すなど、何年振りだろうか。
……………五年振り?いや…この年で六年経つ。
………もうそんなに経つのか。
長い様で…短かった様で…。
そんなことを考えながら、マリアはのんびりとベルトークの部屋に向かっていた。
………普通なら、あの男に呼ばれでもしたらどんな部下も死ぬ気で猛ダッシュして行くのだが……マリアは誰に呼ばれてものんびりだ。
ベルトークの部屋は第1部隊のいる塔のそのまた奥だ。
極度に人間嫌いなのか何なのか、部屋は奥にありすぎて人を寄せ付けない空気が漂っている。
………そんなピリピリした中を、マリアはらんらんと歩いて行く。
………彼女は何と言うか………はっきり言って空気が読めない。
この時間、第1部隊は仮眠時間に入っている。そのせいか、この塔内では誰とも会わなかった。
しばらく真っ暗な廊下を歩いていると、縦長の真っ黒なドアが見えてきた。
正面で立ち止まり、マリアは軽くノックをした。
………中からガチャリ、と鍵を開ける様な音が聞こえた。
重苦しい音と共に、ドアがゆっくりと開いた。
室内の闇が漏れる隙間から、人影が見えた。