亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ベルトークはその場でしゃがみ、マリアの右足を眺めた。
膝にある目玉の様な、真っ赤な丸い石。
………それがパラサイトの種だ。
“解放”をすると、この真っ赤な目玉がギョロギョロと動くのだ。
今は制御しているため、目玉はピクリとも動かない。
ゴツゴツとしていて、何重にも絡まった赤い枝。
隙間という隙間から小さな葉と蔓が覗いている。
「…………よく育っているな…………パラサイトは成樹する確率が極めて低い。…………だがこれは…………このままいけば、立派な世界樹になるだろうな………」
世界樹になった時。
その時が、マリアの終わり。
枝に飲み込まれ、木の一部となって…………死ぬのだ。
しかしマリアは、そんなことなど全く気にしていない。
この枝があるから、自分は生きている。
復讐が、出来るのだ。
だから、自分にパラサイトを植え付けたベルトークを恨んだりなどしていない。
………むしろ感謝している。
「………あの………第1部隊隊長………」
マリアは小さな声で言った。
「―――その呼び方はいい。………名で言え」
ベルトークはパラサイトから視線を外さずに言った。