亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
きめ細かい、絹の様な肌と、乱れた下着。
そして………。
皮膚の表面に浮き出た、太い緑の血管だった。
ベルトークの手が止まった。
「………」
「―――」
興奮が治まらないらしいベルトークの息は、まだ荒かった。
彼の下で髪も服も乱れたマリアは、小さく微笑んだ。
……悲しそうに。
「………だいぶ……寄生が進んでいて……以前は腰の辺りで止まっていたのですが………今はもう………胸の下まで……」
腹部に浮かぶ悍ましい緑の血管は、ざらざらとした感触しか伝わって来ない。
「………これがあるから……私は…………まだ…生きている………。………死ぬ時は……私はこの枝に飲み込まれる………全身が木になって………もう分からなくなって…………仕方無いのは分かってます………でも…」
マリアはこの時初めて、本当に悲しい表情を見せた。
いつもの暖かい笑みは何処にも無い。
今ここにあるのは………悲しくて、辛くて、苦しんでいる女だけだ。
「………こんな風になっても……私はまだ……………人間なのか…な…」