亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
静かな室内で、今だ落ち着かない、乱れた二つの呼吸が響いていた。
いつまでもマリアを離そうとしないベルトーク。
行為が終わった後も、心地よい余韻を味わいながら、二人は動かなかった。
マリアは、顔を赤らめ……泣いていた。
髪を撫でるベルトークの暖かい手。
子供が甘える様に、マリアはベルトークにひしとしがみついて、震えた。
「…………生きていたい…………死にたく……ない…………まだ……まだ…………生きていたい……」
限られた時間が、日が経つにつれ、蝋燭の様にどんどん短くなっていく。
今更ながら……怖くなった。
本当は怖かった。
仕方無いと思いながら、恐怖に震えていた。
「………………嫌……もっと……生きていたいの…………死にたく………ない………」
ベルトークは無言で、悲しげな表情を浮かべて、マリアを力強く抱き締めた。
この狂おしい程愛しい時間が、いつか無くなってしまう。
無くなる。