亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
真っ暗な扉の前には、ベルトークとゴーガンが佇んでいた。
二人とも……威圧感のある視線を投げ掛けて来る。
トウェインは立ち止まること無く二人の元に歩み寄った。
「―――訓練の前に…悪かったな」
「………いえ。総隊長のお呼び出しとあらば……」
「………中に入った後、総隊長から指示が無い限り動くな。……いいな?」
「………はい」
軽く頭を下げ、トウェインは帽子を深く被り直した。
空中から自分の巨大な剣を出現させ、ベルトークに手渡した。
………念のため、である。トウェインに反逆の意志があると疑われている訳では無いが……過去の前例があるため、総隊長との面会は最低でも二人以上監視が付くことになっている。
眉間に皺を寄せたゴーガンが、重苦しい黒い扉を開けた。
中は真っ暗だった。
トウェインはゴーガンにも頭を下げ、中に踏み入った。
「―――何構えてやがる」
背後からゴーガンの声が聞こえた。
「………ゴーガン」
戒めるベルトークの呟きを後に、トウェインは歩いた。
鈍い金属音と共に、扉がゆっくりと閉まった。
明りという明り全てが、退場を余儀なくされた。