亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
再び静かになった廊下。
ただでさえピリピリしている空気の中で、二人の男の存在は更にこの場を張り詰めていた。
……存在が問題なのではない。この二人が揃っていることが原因なのだ。
………何とも言えない、音など一切歓迎されないような静寂が漂う。
「―――胸糞悪ぃ………」
ぼそりとゴーガンが独り言を呟いた。
ベルトークはゴーガンの存在自体を完全無視しているのか、ピクリとも動かない。
ゴーガンは握り締めた拳に力を込めた。
手の平に爪が食い込む。
…………総隊長が、あの小娘を呼び出すなど………ここ二、三年は話も無かったのに……………何故この様な時期に突然……。
総隊長が何を考えているのか、全く分からない。
近頃では、予想に反する計画や戦術を命じられるだけでも………何処かに苛立つ自分がいる。
どうしてだ。何故そんなことを命じるのか。
素直に受け止め切れず、疑問ばかりが生じる。
……ムカつく。
……何が?……何が…………。
「……………くそっ…」
ゴーガンは歯を食いしばった。