亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………。
……影ではない。………あれは“闇溶け”の……。
………奇襲……にしては………少ない。
……………………あれは……第2部隊の…。
「…………総団長に早急に報告しろ」
「はっ。何と…」
リストは振り返らずに、顔をしかめて言った。
「………馬鹿が捨て身で攻めてきた…とな」
「………堂々とした奇襲だな。しかも少人数で。……………騎士の習いを完全無視だな」
宣戦布告無しの襲撃は初めてだった。
………掟など関係無いとでも言わんばかりの大胆な行動だ。
………その横暴さに、キーツは半ば呆れ、そして腹が煮えくり返りそうだった。
「………先日の襲撃で弱っているのを狙っての奇襲か………下衆のやる事だな………凶刃の男らしい、卑怯な真似だ」
隊服の上着を羽織りながら、キーツは闇夜を眺める。
「………俺の父を殺した憎い敵だが…………ここまで外道な輩だと、殺す気にもなれんな………リスト、お前に任せても良いか?」
「はい」
リストは敬礼し、出て行こうとした時、奥からしわがれた声が聞こえた。
「―――キーツ様、私も同行してもよろしいですかな?」
そこにはアレクセイが立っていた。