亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
キーツは薄ら笑みを浮かべて首を傾げた。

「………どうしたアレクセイ。……珍しいな」

「ええ。本来ならばこの時間、早々に朝の食事の準備に移りたいのですが…」

アレクセイは真っ白な革手袋をギュッと填めた。

「……………非道なる愚かな敵が、あの暴れ狼とならば……このアレクセイ、是非とも参戦しとう御座います」

にこにこと笑うアレクセイ。…………皺だらけの顔の窪んだ眼球には、ゆらゆらと、静かな憎悪が滲んでいた。


キーツは鼻で笑い、肘掛け椅子に頬杖をついて髪の先を弄りながら小さく呟いた。

「―――許す。………刺して、殺して、また殺して………首を見せしめにしろ」






















「―――ゴーガン隊長が………」

トウェインは呆然とした。

夜明け前のまだ真っ暗な時間。

トウェインの耳に、信じられない情報が流れて来た。




………ゴーガンが部下数名を連れ、城へ乗り込んだ。





そんなことはあってはならない。

それは騎士団の掟に……武人としての習いに背く卑劣な行いだ。



………何故。







「……今日の夜明け頃に、お前と私での偵察任務が命じられていた。………すぐに向かうぞ」



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