亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
微笑を浮かべる老紳士を見て、ゴーガンは眉間に皺を寄せた。

「………死に損ないのじじいじゃねぇか…まだしぶとく生きてやがったか…」

しっかりと覚えている。クーデターのあの日、取り逃がした老人だった。

「………おや…覚えていて下さったか。………実に………光栄な事だ。………………リスト様、やはりこやつは私に任せて頂きませんか?…………長年溜まっていた恨みつらみが……言う事を聞きません…」

アレクセイの低い声は妙に不気味だった。

リストは溜め息を吐いた。

「………良い。僕は他の雑魚を殺る」

「…………ありがとう御座います」

アレクセイは再度ゴーガンに向き直った。

「さて………………この死に損ないの老いぼれがお相手致しましょう。なぁに…退屈はさせませんぞ…」


ゴーガンとアレクセイは同時に剣を構えた。















沈黙の森を真っ直ぐに突っ切っていると、高い木々の隙間から徐々に孤城の白い光が見えてきた。



………ゴーガンは今、どうしているのだろうか。

「思念伝達が届かない………ということは…“闇溶け”を解いている状態か……」


ベルトークは呟いた。



………もう、既に戦っているのだろう。
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