亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………ご無事であるなら…」

「………無事?」

暗闇の中で、ベルトークが笑った様な気がした。

「…………無事など………あの男は望んでなどいないだろう…」

「………」

………トウェインは城に視線を向けた。













傷自体は浅く、小さなものだった。


………しかし、次第に身体が重くなってきた。

いつの間にか息を切らしている自分に気付き、ゴーガンは一度立ち止まった。

「………じじい………何しやがった」

正面で礼儀良く佇む老紳士は、少しも呼吸に乱れが無い。

「………何かとな?大した事はしておらんよ。………戦術の基本よ。………人の身体というものは、複雑に出来ている。それ故…要となる部分はいくらでもある」

アレクセイはコキコキと首を回し、微笑を浮かべた。

「……簡単に殺るのならば首の後ろ。背骨を傷つける程深ければ尚良い。頸動脈の切除、脇腹から斜め上に刺す臓器破壊………頭蓋骨を砕くより断然手早く出来る。………なぶるのならば、まず五体の内、足から切る事だ。………………少しは勉強になったかな?若者よ…」

「…………この野郎………っ!」

遊ばれている。

こんなじじい一人に………!
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