亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――……っ!?」


………久しぶりの『痛み』だった。

………刺されるとは…こんなにもビリビリとした痛みだっただろうか。




大して大きくもなく、長くもない、細身の古い剣が、胸の中央を真っ直ぐ貫いていた。


「………自分の身体に風穴が空くのは……どの様な気分だね?」

アレクセイは柄を握り直し、ぐるっ…と剣を回転させ、思いきり引き抜いた。



………声も出ない。激痛が襲った。

刺された上に回され、皮膚、肉、血管、気管支……中でぐちゃぐちゃに潰れた。

肺も破れている様だ。

…………急に呼吸が出来なくなった。

口からはヒューヒューと妙な空気の漏れる音がする。





ゴーガンは剣を地に深く突き刺し、もたれかかる様に前のめりになった。



…………物凄い早さで力が抜けて行く。上から下へ。血が流れる時と同じ感覚。



………感覚が無くなってきた。…何を掴んでるのか。何処に立っているのか。
分からない。


しかし、身体は酷く冷たかった。寒さだけが、自分が生きていることを教えてくれた。



霞んできた視界の中で、アレクセイがゆっくりと、両手で剣の柄を握り締めるのが見えた。






……………。



―――。
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