亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
暗闇の荒野。
真っ赤な血がいくら染み込んでも、その土は血に飢えている。
そしてまたその夜も、誰とも区別の付かない濃い赤が、大地の喉を潤していた。
もう何も見えないゴーガンの目は、荒野の全景を見下ろしていた。
細長い木の杭の天辺に、血の気のない大柄な男が貫かれ、高く、高く、掲げられていた。
群れから離れた一匹狼。
その遠吠えは遠過ぎて、もう聞こえない。
「――――…」
「―――………退くぞ」
立ち並ぶ針葉樹林の群衆。その高い木々の天辺に佇み、しばらくの間トウェインとベルトークは、さらしものにされた仲間の一人をじっと見ていた。
ベルトークは先に“闇溶け”でその場から消えた。
残されたトウェインは、城をじっと見据えた。
「―――……おい…あれ…」
「………?……なん……」
オーウェンがふと気付いた様に沈黙の森の方を指差した。
キーツはそちらに視線を移し………一瞬声を詰まらせた。
キーツと、トウェインの視線が重なった。
トウェインは真っ直ぐ、相変わらずの目付きでキーツの視線を受け止めた。