亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


曇りがかった真夜中の空。

星明かりもまばらに、月光さえ地に射さない暗い空。







塔の周りで、ライマン達が吠え出した。

影の襲来とは違う。





ライマン達は皆、空に向かって吠えていた。










「―――………何かいるよ」

「―――うん………いるね」



いち早く異変に気付き、外に出ていたイブとダリル。

二人とも塔の屋根に飛び移り、雲が漂う上空を見上げた。



「………どうした?」

トウェインも二人に追いつき、同じ様に視線を上に向ける。

―――風が強い。





「―――……生き物だよ………飛んでる」

「ちょ―っと待ってね―…」

イブはカッと瞳を白く濁らせた。

遥か上空の彼方。
厚い雲が移動する真っ黒な空。





………イブの瞳は捉えた。




「…………赤い鳥。………大きいよ。全長10メートルくらい。………この辺をずっと徘徊してる………………………………………人が乗ってる」

仮眠中のジスカも、この事態に起きてきた。………塔の外には大勢の部下が怪訝な表情で空を見上げていた。

「…………鳥の翼は?………何か見えるか?」




イブは目を凝らした。






< 531 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop