亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
曇りがかった真夜中の空。
星明かりもまばらに、月光さえ地に射さない暗い空。
塔の周りで、ライマン達が吠え出した。
影の襲来とは違う。
ライマン達は皆、空に向かって吠えていた。
「―――………何かいるよ」
「―――うん………いるね」
いち早く異変に気付き、外に出ていたイブとダリル。
二人とも塔の屋根に飛び移り、雲が漂う上空を見上げた。
「………どうした?」
トウェインも二人に追いつき、同じ様に視線を上に向ける。
―――風が強い。
「―――……生き物だよ………飛んでる」
「ちょ―っと待ってね―…」
イブはカッと瞳を白く濁らせた。
遥か上空の彼方。
厚い雲が移動する真っ黒な空。
………イブの瞳は捉えた。
「…………赤い鳥。………大きいよ。全長10メートルくらい。………この辺をずっと徘徊してる………………………………………人が乗ってる」
仮眠中のジスカも、この事態に起きてきた。………塔の外には大勢の部下が怪訝な表情で空を見上げていた。
「…………鳥の翼は?………何か見えるか?」
イブは目を凝らした。