亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「……………………逆さに燃えた火の……………赤い紋章………」
そう聞くや否や、トウェインは舌打ちをした。
「―――弓を持て!!………………………………逆さに燃える火の紋章……………………バリアンか!」
戦争大国バリアン。
この燐国は鎖国状態の中でも、時々間者を送って来る。
あちらの国にしかいない、サラマンダーという赤い大きな鳥に乗って、こちらの領地に侵入してくるのだ。
過去、挑発的な攻撃を受けたこともある。
「…………またかよ。……よく……飽きないねぇ…バリアンの王様は…」
部下が投げた弓を掴み、ジスカは空を凝視しながら矢を番える。
トウェインもすぐに番え、真上に向かって矢先を向けた。
すぐ脇でダリルが指示する。
「………そこから北西へ…10時の方向…………………ゆっくりと飛んでる………方向転換した。……………今だ」
トウェインとジスカは同時に放した。
2本の矢は真っ直ぐに伸び、厚い雲の中に消えた。
―――黒い雲から、雷に似た赤い光が溢れた。
雲の表面に、紫の丸い魔方陣と古代文字が浮かんで見えた。
「あ~らら………移動魔法だ。……逃げられちった」