亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
ローアンはいつもの鼻歌を口ずさみながら、トウェインの方を何度も振り返って歩いて行く。






―――こっちよ。











小さな少女の声が木霊する。


………ローアンは城壁の角の方へ消えた。



…………トウェインは無言で、あの夢現の少女の後を追った。


………城壁内に侵入するのは避けるよう言われていた。
しかし、普段厳格である自分は何処へやら、何の躊躇いも無く、ふわりと城壁の上を越した。




………城壁内に音も無く飛び下り、闇を纏ったままトウェインは辺りに目を凝らした。

城壁内は城の純白の光が強い。気を抜けば“闇溶け”が解けてしまう。

なるべく薄暗い影に身を潜め、トウェインはローアンを探した。




―――何を探しているの?






くすりと、すぐ傍から笑い声が聞こえた。

視線を下ろすと、いつの間にやら、笑顔のローアンがトウェインを見上げていた。


ローアンは手招きをしながら駆けて行く。



―――こっちよ。こっち。…ついて来て。


























城壁に沿ってひたすら彼女を追いかけ、導かれるまま辿り着いたのは、城壁内の角にあたる場所。


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