亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………緑の芝生が永遠と続く中、そこ一点だけが、枯れていた。
………土の色や枯れた葉や根からして…過去、花か何かが咲いていたのかもしれない。
―――お花畑だったのよ。真っ白な花畑。………一番好きな場所よ。
黒ずみ、痩せた土。
物寂しい小さな大地に足を踏み入れ、ローアンは楽しそうにくるくると回る。
―――ここでいろんな花を見れた。ルアも生まれた。キーツにも会えたわ。………思い出深い場所なの。
くるりとローアンはトウェインに向き直り、可愛らしい笑みを浮かべた。
―――……この場所に、見覚えはないかしら?………トウェイン。
………見覚え?
トウェインは茫然と、この荒れ果てた花畑を見下ろした。
………見覚え?………そんなの……。
―――……覚えてないの?忘れてるのね。………思い出して。………言ったでしょう?貴女は………。
―――夢の中で、少女が囁いた言葉。
「―――…違…う………違う………そんなの……知らない…だって……私は………」