亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
やはりこれは夢の続きなのだろうか。

……悪い夢の。

訳の分からない、曖昧な。


愚かな。






「―――違う………違う…私は…お前なんて………」


トウェインはゆっくりと後退した。狼狽するトウェインに、ローアンは微笑を浮かべたままだ。


「………ローアンなんて………お前なんて…………知らない……私は…………!」



城の光がトウェインを照らした。
……“闇溶け”が解ける。纏っていた闇が徐々に薄くなっていくのを感じながらも、トウェインは何も出来ずにいた。


「…………知らない…………知らないんだ…………本当に何も……知ら………………」


“闇溶け”が解けかかり、感覚が戻るほど半ば実体化していた身体。












後退しようと一歩引いた足に………ふわりと、柔らかいものが触れた。








動揺し、揺れ動く瞳に……………小さな、小さな………白い花が映った。













何年も野晒しにされ、荒れ果て、乾いた花畑。






そこに…………咲かない筈の花が………花弁を開き、トウェインを見上げていた。


綺麗な花だった。




一輪の………真っ白な。







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