亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
拳骨を作ってイブにズカズカと歩み寄ろうとしたジスカ。

トウェインは「………ベルトーク隊長に報告しに行くぞ」と言って制し、苛々しているジスカを連れて塔内に向かった。


震えは治まった様だが、暗い影を落とすトウェインの後ろ姿。

二、三歩ほどの距離を保ったまま後ろに続くジスカは、そんな彼女を怪訝な表情で見詰める。



「―――………もう大丈夫なのか?………さっきのは…」

「………ああ」

トウェインは振り返る事なく答えた。


………結局、理由は分からない。
しかしジスカはあえて訊こうとはしなかった。


………言いたくないことは誰にでもある。


「…………そうですか。……………しかし…残念だなぁ―?……もう大丈夫なのか………可愛かったのになぁ~」


ジスカはヘラヘラと笑った。いつもならここで暴言か蹴り、睨みが返って来るのだが…………。






トウェインは歩みを止め、ゆっくりと振り返った。





………何処か寂しげな…綺麗な微笑がジスカに向けられた。





「……………ありがとう………ジスカ」





















ジスカは見慣れていた笑顔に、一瞬見とれていた。





そんな顔をするな。
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