亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
釈然としない様な、不満そうな表情を浮かべるジスカ。
そんな彼の肩を軽く叩き、トウェインは踵を返してジスカと別れた。







軍議を行う部屋とは逆へ。

もう一つの軍議室へ。

あの場所は以前一度だけ行ったことがある。
……一度だけ。自分にとって初めての襲撃に備えた軍議で…使った部屋。

あそこには………あれがある。









…………隊長クラスの人間でも、無断で使ってはならない、触れてはいけない………禁書。






―――アカシック年代記………。













鍵がかけられている最奥の部屋。



扉の前で、トウェインはぎゅっと目を瞑った。


………総隊長…………………お許し下さい。


トウェインの身体は一瞬で真っ暗な黒煙と化した。

“闇溶け”で闇を纏ったトウェインは、重々しい寡黙な扉を、すぅっと通り抜けた。


























節くれ立った細い指先が奏でる単調なリズム。
コツ…コツ…と肘掛けを弾いていたクライブの指が…………静止した。




クライブはゆっくりと天井を見上げた。見詰める先にはやはり、闇しかない。


「―――どうかなさいましたか…」


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