亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
部屋の扉の前に佇むベルトーク。
クライブのほんの少しの異変も見逃さない。クライブは天井を見上げたまま、深い息を吐いた。



「―――……トウェイン……か……………………アカシックを……開こうとしている」




「…………止めましょうか?……………………ご命令とあらば…」

ベルトークの手元に黒い靄が絡み付く。………刃の鈍い光沢が見え隠れしていた。

クライブは薄ら笑みを浮かべた。

「………………必要無い………………むしろ………」

「……………しかし………それでは………」




「………どうなろうとも……………………あの娘の…………意思だ」

















(………)

トウェインは部屋の中央に歩み寄る。


向かう先には、暗がりにポツンと孤立する、分厚い書物。

金で縁取られた古代文字が並ぶ古びた表紙。黄ばんで所々破れた頁の束。



アカシック年代記。

…………数多くある中で、これは個人の歴史を語るもの。













―――真実を知るためには………この書を開くしかないのだ。











―――私の………私自身を。






何処か欠落している私自身の。
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