亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――…どうしたんだルア。……昨日からおかしいぞ…?」
昨夜からあちらこちらを行ったり来たりして、なんだか落ち着かない様子のルア。
今朝になってもそれは変わらず、何度呼んでも途中で立ち止まる。
城の方をしきりに見やり、クンクンと小さく鳴いていた。
「………城がどうしたんだ?……相変わらず、中には入れない状態だ。分かっているだろう?」
そっとルアの真っ白な背中を撫でる。
ルアは不意に、するりとキーツを追い越し、塔の屋上へと続く階段へ駆けて行った。
(………?)
訳が分からないまま、キーツはルアの後を追った。
以前の襲撃で破損していた壁や階段はだいぶ修復されており、出入りしても大丈夫だった。床や壁に染み付いた多量の血痕はそのままで、各階には悍ましい風景が広がっている。
高い屋上に出ると、光り輝く城をじっと眺めるルアの姿があった。
…否……城…ではなくて………その城が立つ丘を見ている。
透明な壁の内側にある、緑の草原が広がる丘。
「………何を見てるんだ?………お前が生まれた花畑か?残念だが、とっくの昔に枯れ果てて……………」
………キーツは目を凝らした。
痩せた土だけが広がる小さな空間。