亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

何年も前からそこは荒れ果て、花畑など見る影も無くなっていた。

もう何も咲かないだろう。

そう思っていた。






















そこに………………真っ白な花が一つ。















昔見た、あの………懐かしい……。












夢でも見ているのでは?

ある筈が無いのに。


咲いている筈が無いのに。















足下でルアがクンクン鳴いている。





花の姿を懐かしむ様に、愛しく、鳴き声をあげる。








黒ずんだ大地の中で、陽光を浴びる真っ白な花弁。


簡単に折れてしまいそうな細い茎を真っ直ぐに伸ばし、ゆらゆらと風に揺れていた。






< 571 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop