亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
何年も前からそこは荒れ果て、花畑など見る影も無くなっていた。
もう何も咲かないだろう。
そう思っていた。
そこに………………真っ白な花が一つ。
昔見た、あの………懐かしい……。
夢でも見ているのでは?
ある筈が無いのに。
咲いている筈が無いのに。
足下でルアがクンクン鳴いている。
花の姿を懐かしむ様に、愛しく、鳴き声をあげる。
黒ずんだ大地の中で、陽光を浴びる真っ白な花弁。
簡単に折れてしまいそうな細い茎を真っ直ぐに伸ばし、ゆらゆらと風に揺れていた。