亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

日も沈んだ頃。

朝からどんよりとしていた、今にも泣きそうな空。

太陽が眠りにつくと同時に、大粒の涙を流し始めた。


静かな暗闇から、空の泣き声が聞こえてくる。

久しぶりの雨だった。










だだっ広い真っ暗な室内で、ジスカは腕を組んで…しかしいつもより姿勢を正して椅子に座っていた。



…………普段は使われていない、奥の大きな椅子。


そこに今、腰掛けるのに相応しい人物がいた。


隊長の身分であっても最高の敬意を払わなければならない、我が長。


このアレスの使者全ての権力と指導権、そして戦争の勝敗を握る男。





―――総隊長。クライブ=フロイア。













いるだけで、その存在だけで………身体が動かなくなる。

全く隠そうとしない、凄まじい憎悪と殺気。
ビリビリと極限まで張り詰めた空気。






………この御方の戦う駒となってからもう6年になるが………………慣れない。

どうしても慣れない。

………こんな近くに自分なんかがいて良いのかと、自己嫌悪に陥りたくなる。




ジスカは呼吸することさえも不器用に、ただただ無言で、じっとしていた。

………。


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