亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
―――この世界は、アレスという神が創造したと言われている。
アレスは中央に穴の開いた小さな皿を宙に浮かべ、周りをぐるぐると回り続ける火の玉を、真下には涸れることのない噴水を置いた。そして水が注がれた皿の上に、葉が分かれた三つ葉を浮かべた。


世界は皿の様に平らで、海の中央から淡水と海水が別れてわき出ている。皿から溢れる海水は世界の外に零れ落ち、蒸気となり、雨となって地上に降り注ぐ。
その水溜まりの様な世界には、葉の形をした三つの大陸が浮かんでいる。



―――…一つは凍て付く氷の北の大陸。

国の名は『デイファレト』。

王は短命で終わり、それを機にいがみ合っていた燐国が戦争をしかけ、デイファレトは滅亡。
王位継承権を持つ子孫は行方を眩ましてから数十年になる。争いにより国土は荒れ果て、天災と病に見舞われ、今は僅かな民しか残っていない。



―――…一つは熱風吹き荒れる砂漠の南西の大陸。

国の名は『バリアン』。

国政の殆どを戦争に費やすという悪政を行った王は、燐国デイファレトを滅ぼした後、デイファレトの王の血筋を根絶やしにしようと子孫を捜索するが、自国が雨の降らない天災に見舞われる。それまでの環境は一変し、砂漠の国となる。
現在、バリアンの王は城内に立て籠もり、他国とは一切の交流を持とうとしない鎖国状態の国となっている。

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