亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
華奢な腕はスルリと束縛から抜け出し、密着するジスカの身体を強く押した。
「―――ジスカ…!!」
グイッとトウェインの手がジスカの肩を押し返した。
突然愛撫を制され、既にうっすらとしていた理性が蘇ってきた。
互いに荒い息をしながら、無言で見詰めあった。
………戸惑いと悲しみが浮かんだトウェインの揺れる瞳。
やろうと思えば行為を続けられるのだが……。………ジスカはじっと目下の彼女を見下ろしていた。
………全く、知らなかった。
一番親しい、信頼出来る友が………そんなことを思っていただなんて…………知らなかった。
………こんな彼を、初めて見た。初めて知った。
私が抱いているのは、心地良い友情と、固い信頼。
しかし彼が抱いているのは……。
………私は………彼をちゃんと見ていなかったのかもしれない。
まだまだ、子供だったのかもしれない。
……………しかし………私は………。
互いの呼吸音と雨音以外何も無い、沈黙漂う空気の中。
……………トウェインは、ジスカを見上げたまま口を開いた。