亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「――――私は………」














……目尻から溢れた温い涙が一滴。

ゆっくりと白い頬を伝っていく。
………泣きそうな声で、トウェインは言った。























「―――………私は……………ジスカを………そんな風に…見れない……………」


















―――トウェインは………拒絶した。

泣きそうな顔で、拒絶した。








…………いつも見る夢と同じ………それ以上に………悲しく思えた。


―――…泣かせたくなどなかった。
















………ジスカはふと視線を逸らした。












掴んでいた手を解放し、彼女の上からゆっくりと身を引いた。




床にずり落ちているトウェインの上着を拾い、肌が露になっている彼女に投げてよこした。




ただ無言で背を向けて、自分の乱れた着衣を整えていく。






広い背中を見詰めながら、トウェインも黙って乱れた着衣を戻していく。




………最後にベルトを締め終えたジスカは、頭を掻きながら溜め息を吐いた。








「―――…………あ―あ。…………ふられちまっ…………た…」
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