亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
再び聞こえてきた彼の声は、何処か楽観的な調子の声だった。
クルッと振り返ったジスカは、いつもの笑顔を浮かべていた。
「………何だよその顔は。………謝っても許してくれねぇだろうが……謝らせてくれ。………すまねぇ。……………悪かった。……………………………たくっ………辛気臭ぇな…」
罰が悪そうに頭を掻き、落ちていたトウェインの帽子を掴み、半ば呆然としている彼女に強引に被せた。
「………これじゃあ俺、可哀相な野郎じゃねぇか。嘘でもにやにやしろっての。………………ほらほら!失恋男に構っていると………また襲っちまうぞ?」
そう言ってトウェインの手を引っ張り、扉を開け、早く出てけと言わんばかりに背中をグイグイ押してきた。
「…………ジスカ…」
「………早くしねぇと夜が明けるぜ。………逃亡者はもっと用心深くするんだな。……………見送りなんかしてやらねぇからな」
意地悪な笑みを浮かべ、トウェインの背中を押した。
「………………じゃーな。………死ぬんじゃねぇぞ。………次に会った時は情けなんか無用だからな。…惚れた女でもな」
「……………………………………………ありがとう………」