亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
…………………ジスカ………。


普段通り、何も無かったかの様に明るく振る舞うジスカ。


…………その姿はなんだか、とても…。





トウェインの胸に、罪悪感に似た感情が過ぎった。








廊下に追い出されたトウェインは、ジスカに微笑を浮かべ、クルリと背を向けた。









「………………またな」










また会う時が来るのだろうか。






暗い廊下に歩み出た細い華奢な身体は、あっという間に黒煙と化した。




冷たい闇の微粒子は空気に溶け込み、彼女の姿は跡形も無くなった。













………誰もいない廊下を見詰め、静かに扉を閉めた。



扉を閉めると同時に、ジスカは背中を預けた。


………揺らめく蝋燭の明かり。



淡い柔らかな光は、扉の前でずるずると座り込み………………震えながら両手で目元を覆うジスカの姿を照らした。










「―――っ………なん……で…………なんでだよ…………俺は………………あい………つを………」






熱い涙が止めど無く流れた。拭いもせず、ジスカは肩を震わせて。



どうしようも無く、泣いた。




泣いた。









彼女が本当に、好きだったから。

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