亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
好きで好きで仕方なくて。
堪らない程好きで。
でも……彼女は違った。
………欲しかった。
どんなことをしてでも……欲しかった。
しかし自分は………………彼女を泣かせることしか出来ない。
…………見たいのは彼女の笑顔であって………悲しむ君ではない。
俺は…………彼女にとって………近過ぎたのかもしれない。
―――彼女は………いつもすぐ側にいた。
手を伸ばせば触れる所に。
すぐに抱き寄せれる所に。
こんなに近いのに。
彼女は急に、遠い存在となってしまった。
彼女はあまりにも近く、遠過ぎて。
「…………俺じゃ………………駄目なの………か…………俺じゃ………………」
ジスカは独り、扉の前で彼女の名を呟きながら泣いていた。
―――幼い頃から恋い焦がれてきた彼女は、いつの間にか。
追いつけない程、遠くにいた。
パラパラと降る弱い雨。
塔の外に、闇の塊が現れた。