亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

好きで好きで仕方なくて。




堪らない程好きで。










でも……彼女は違った。










………欲しかった。




どんなことをしてでも……欲しかった。





しかし自分は………………彼女を泣かせることしか出来ない。


…………見たいのは彼女の笑顔であって………悲しむ君ではない。









俺は…………彼女にとって………近過ぎたのかもしれない。










―――彼女は………いつもすぐ側にいた。


手を伸ばせば触れる所に。

すぐに抱き寄せれる所に。








こんなに近いのに。







彼女は急に、遠い存在となってしまった。










彼女はあまりにも近く、遠過ぎて。








「…………俺じゃ………………駄目なの………か…………俺じゃ………………」








ジスカは独り、扉の前で彼女の名を呟きながら泣いていた。







―――幼い頃から恋い焦がれてきた彼女は、いつの間にか。









追いつけない程、遠くにいた。























パラパラと降る弱い雨。
塔の外に、闇の塊が現れた。
< 609 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop