亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
寡黙な沈黙の森は、真っ暗な口を開けていた。
闇に紛れ、トウェインは少しずつ、“闇溶け”で身体を消していった。
………トウェインは六年の歳月を生きた場所に、背を向けた。
決して振り返らず、真っ直ぐ前を見据えて。
捨てたのだ。
無くしてしまったものを探しに。
己を探しに。
誰かが進めば、周りは動く。
道を変えれば、運命も変わる。
走れば走る程、世界は回る。
少しずつ、少しずつ、錆び付いていた歯車が、再び回り始める。
ぎこちない動きで。
しかし確実に。
トウェインは走った。
何も無い闇に向かって、ひたすら走った。
道を照らす明かりなど要らない。
道など、最初から無いのだから。
不思議と、寂しくも悲しくも無かった。
何故だろうか。
この胸の高鳴りは、武者震いに似ている。
何故だろうか。
何とも無いのに。
涙が、止まらなかった。